あれから10年…

 東日本大震災から10年が経ちました。
あの日の情景は今でも脳裏に焼き付いて離れませんし、18,425人の尊い命が一瞬で
奪われた衝撃、悲しみは決して忘れることは出来ません。 大切な人を亡くされた方や
被災された方の苦しみは、直接的な被害を受けなかった私にはとうてい理解しきれる
ものではありませんでしたが、当時、今、自分自身に出来ることはなんだろうと
自問自答し、たどり着いた結論は、小児科医として目の前の患者さんに最善の医療を
提供するという、自分に与えられた使命をきちんと全うすることと、この悲劇を決して
忘れず継続的な支援をしていくという事でした。

 この10年、与えられた使命を全うできていたか…今振り返ると、おそらく十分にできて
はいなかったのではないかと思います。 私もこれからあと何年臨床の現場に立つこと
が出来るのかわかりませんが、いつ、それが終わっても悔いが残らないように、もう一度
原点に戻り、質の高い診療を心がけるようにしようと思います。

 継続的な支援に関しては、被災された方々に少しでも役立ててもらえればという
思いと、自分自身の中で震災の記憶を風化させないために、震災後から毎日500円ずつ
積み立てて、それを月1回まとめて、10年間、日本赤十字社を通じて被災地に寄付を
してきました。 被害の大きさを考えれば、私の支援は決して十分なものでは
ありませんが、細々ではあっても、継続した支援ができたことは、震災の記憶を
忘れない、被災された人々の悲しみや苦しみを忘れないという面では、私自身に
とってはとても意義のあることであったと思います。

 震災後10年が経ち、被災地の復興も進み、被災された方々も前を向いて新しい生活を
始めている中で、私自身、今後の支援のあり方についていろいろと考えました。
この10年、我が国でも様々な自然災害が発生し、現在は新型コロナウイルスの世界的な
流行で多くの人達が苦しんでいます。 私たちが自然と共生して生きていく上で
これらの試練は避けて通れませんし、今後も何度となくこれらの試練は私たちの前に
立ちはだかると思います。
 このような状況を考えた結果、今後は東日本大震災のみにこだわらず、広く、困って
いる人達への支援をおこなっていこうと考えました。 そこで、今回で東日本大震災
への寄付には一旦区切りを付けて、これからは、災害や事故、自死などで親を亡くした
子ども達の支援をしている“あしなが育英会”への継続的な支援を行うことと
致しました。

 支援する形は変わりますが、これからも東日本大震災のこと、被害に遭われた方の
悲しみ、苦しみは決して忘れないようにしていこうと思っています。
 皆さんも、どんなことでもかまいませんので、自分で出来る範囲のことで、社会に貢献
できることはないか、今一度考えてみてください。 
 みんながそれぞれ少し考えることで、これからの子ども達の未来が少しでも明るく
なるのではないかと思っています。

                                 2021年3月

                                             


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